普通の女の子
2014年02月15日 (土)
「クリスちゃん、どうしたの?」
隣に座っていた鵜島さんの、鈴が転がるような声で、私はまた心がどこかに転げ落ちていたことに気が付いて、ゆっくりとそれを拾い上げると、軽く3、4回はたいて懐に収め、つとめて何事もなかったようににっこりと彼女に微笑んでみせた。
「あら、ごめんなさい~私時々、ぼうっとしてしまう癖があって。何かの病気かとも思ったのだけれど、お医者さまが言うには、少しばかり放心してしまっているだけらしいの」
「そうなんだ。よくわからないけど、病気とかじゃないんならよかった」
鵜島さんは面倒見が良くて私を何くれとなく気づかってくれるだけでなく、私が自分の症状について話したくないのだということを今の言葉と口調だけで読み取ってくれる程度に頭脳の回転が早くて、しかも美人だ。外見的には中の上くらいに思われているようだけれど、多分無意識にやってのけている、人と会話する時のまっすぐで正々堂々とした視線とか、その双眸の下でやや低めだけれど形よくまとまっている鼻梁に散らされたそばかすとか、普段から身にまとっている自然体な無防備さとか、そういった部分を総合して美人だなと思わせるところが実に美人なのだ。私は彼女の、そういう美人さに誰かを思い出そうとするのだけれど、でも、その試みはいつだって失敗に終わる。その「誰か」は、私の記憶の中には存在していないからだ。なのに、私はいつだって、記憶の中にある「誰か」がそこにいたはずの空白というものを認識していて、折りに触れてその記憶に続く糸をたどろうとしてしまうのだ。
隣に座っていた鵜島さんの、鈴が転がるような声で、私はまた心がどこかに転げ落ちていたことに気が付いて、ゆっくりとそれを拾い上げると、軽く3、4回はたいて懐に収め、つとめて何事もなかったようににっこりと彼女に微笑んでみせた。
「あら、ごめんなさい~私時々、ぼうっとしてしまう癖があって。何かの病気かとも思ったのだけれど、お医者さまが言うには、少しばかり放心してしまっているだけらしいの」
「そうなんだ。よくわからないけど、病気とかじゃないんならよかった」
鵜島さんは面倒見が良くて私を何くれとなく気づかってくれるだけでなく、私が自分の症状について話したくないのだということを今の言葉と口調だけで読み取ってくれる程度に頭脳の回転が早くて、しかも美人だ。外見的には中の上くらいに思われているようだけれど、多分無意識にやってのけている、人と会話する時のまっすぐで正々堂々とした視線とか、その双眸の下でやや低めだけれど形よくまとまっている鼻梁に散らされたそばかすとか、普段から身にまとっている自然体な無防備さとか、そういった部分を総合して美人だなと思わせるところが実に美人なのだ。私は彼女の、そういう美人さに誰かを思い出そうとするのだけれど、でも、その試みはいつだって失敗に終わる。その「誰か」は、私の記憶の中には存在していないからだ。なのに、私はいつだって、記憶の中にある「誰か」がそこにいたはずの空白というものを認識していて、折りに触れてその記憶に続く糸をたどろうとしてしまうのだ。
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「もうすぐ、バレンタインデーだね。私は少しだけ興味あるほうだけど、クリスちゃんはそういうの、気になるほう?」
少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべ、鵜島さんは私をちらりと一瞥して、それから視線を外した。こういうところが、実に上手いと感じてしまう。あの子とは正反対だ。
「気にならない、と言えば嘘になっちゃうかな~。だから、私も“少しだけ興味あるほう”に入るかもね~?」
私は、頭をよぎる影を振りほどいて、現実で相対する少女に負けじとほほ笑んで見せた。うまくいっているといいのだけれど。彼女は、形の良い、すっと通った眉を思い切りハの字にして口を尖らせ、力抜けた体で前に倒れ込むしぐさをとる。全身で演技する術を知っているのだ、この娘は。
「もうー、そうやっていつもはぐらかすー。 じゃあさ、私がもう少し踏み込んで話したらクリスちゃんももう一声いけるとかない?」
「あら、踏み込めるほどに興味があったのね。そうしたらぜひ聞かせてもらわなきゃ。親友としては、何か一役買えるかもしれないわよ~?」
「だめだめだめ! そうやって私だけに話させようっていうんでしょ! その手には乗りませんー、ちゃんとクリスちゃんの話も聞かせてもらうんだからね!」
親友、という言葉を敢えて口にしてみせたのを華麗にスルーされたことを良い方に捉えて良いのか悪い方に捉えるべきなのかで少しばかり迷うことになった。もう少し考えて言葉を選ぶべきだったとやや後悔したものの、済んだことに拘っているのは良くないというのは間違いないだろう。先を見なくてはいけない。
「私の場合、あまり具体的なことは言えないし、ひょっとしたら笑われてしまうかもしれない類の事柄だから~」
歯切れの悪いせりふだな、と我ながら情けなく感じつつもそう返すくらいにしか今の私には余裕というものがない。だから、どうしたって鵜島さんの器に対して素直に向き合えていないのだろう。
「笑ったりしないよ。笑うもんか。だってそれって私だけに話してくれることでしょ。きっとそう。クリスちゃん、誰にだって自分の事ほとんど話さないし、でも私にはそうやって、話そうとしてくれるんだから。そういう気持ちを笑ったりできるはずないよ」
この人は天使か何かだろうか。何をどうやったらこんな生き物ができあがるのか。私はこれが神をいうものの所業だとするならば今すぐでも入信しかねない。恐ろしい。というか、もうどうしたらいいかわからない。だめだ。
そこまで思考が進んだところで、意識がすっとんだ。
『バーカ、無理して分に合わないキャラ作ってんじゃねーよ。そんなに大した器持ってねーんだからできることだけやっときゃいいんだよ』
『あらあ? どの口がそんなことを言うの~? 私が居ないとビクビク後ろを振り返ってるくせに~」
『ビクビクなんてしてねーだろ! お前が居るときは正面に集中できる、居なきゃ後ろだってそりゃ気にしないわけにはいかねーだろうが』
『ふ~ん』
『何ニヤニヤしてんだよ! 良いからお前はお前らしくしとけよな!』
目が覚めたら、そこは白い天井で、それは昔どこかで見た景色とよく似ていた気がした。それは錯覚だろうとわかるけれど、やっぱりそれでも似ていると思うのだ。それと、視界の隅には可憐な少女の心配そうな顔。
「ごめんなさい、私また」
「無理しないで、寝てていいよ。私こそごめん、何か、無理させちゃったんでしょ」
そうじゃない鵜島さん、無理をしたのは私が自分の意志でしたことなのだから貴女が謝るのはよくないこと。そう言葉にしようとしたけれど、貧血のせいでけだるさと嘔吐感に苛まれて、呼吸すらも満足にできなくなってしまった。
「………鵜島さん、ありがとう」
しばらくの間をおいて、やっとそれだけは口にできた。
「わかんないよクリスちゃん、私感謝されるようなこと何もしてない」
声が震えているのがわかる。今は目をつむっているからその顔はわからないけれど、多分、あまり素敵な表情ではないだろう。見えなくてよかったのか、それとも私は罪から文字通りに目を背けているだけなのか。
「私ね、ずっと貴女と誰かを比べているの。非道い女なのよ」
私は、相手の反応が見えないのをいいことに、事もあろうに懺悔を始めることにしたのだ。彼女の優しさに甘えて、救われようとしている。本当に、非道い女。
「私は、ここ何年かより前の記憶がないの。それはもう、綺麗さっぱりと、消しゴムをかけたノートよりも、絵の具をぶちまけたキャンバスよりも、嵐の後の青空よりも、驚くくらいに、何もないのよ」
彼女は何も答えずに、黙っている。私に喋ることを赦してくれているのだ、と好意的……いや都合よく解釈して、私は続ける。
「でも、私の、そのまっさらなはずの、記憶の中に、確かに、消えた跡みたいなものはあるの。黒電話の脇にあるメモ帳の、上から7番目に裏写りした筆跡くらいの頼りなさで、読み取ることはとてもできないくらいの痕跡でしかないのだけれど、確かにそれはあって、私はその、ほんの少し残った僅かな傷を、そう、傷を確かめたくて、それを求めてしまうのよ」
ひょっとしたら今にも席を立って出て行ってしまうかもしれないという恐れにちりちりと胸を焼かれても、もう、私は止まることができなかった。
「鵜島さん、私、貴女のこと、好きよ。そう言ってしまえるくらいには好き。その程度の、好き。あなたはとてもきれいで、凛々しくて、強い。いつだってまぶしいくらいに魅力に溢れてる。だから、私は、私には、あなたの強さと輝きは、辛いの。苦しいのよ」
私は滔々としゃべり続けた。時折痰がが絡むこともあったし、せき込んだりもしたし、嘔吐感は止むことはなかったけれど、それでも口をつぐむことはしなかった。そして、鵜島さんは、その間、決して席を立つこともしなかったし、口をはさむこともしなかった。それを、私は優しさだと受け止めて、彼女に醜い自分をぶつけてゆくのだ。
「貴女と一緒にいて、貴女と話すとき、私はいつも、貴女の魅力を感じながら、同時に、もうひとりの、誰かを想っていたのよ。それが誰なのか、私にはわからない。わからないけれど、確かに私はその誰かを知っていて、こう思っていたのよ。“鵜島さんは、あのひととはちがう”」
そこまで喋り終えて、私は一仕事終えた農夫のように、深く息をついて、そのあと、空を見上げようとして見えずに天井の一点を見つめ、そのあと眼をつむって、心残りなく死ぬときのイメージを思い浮かべながら、〆の言葉をつぶやいた。
「鵜島さん、もう一度言うわ。ありがとう。非道い女だったでしょう」
傍らで、微かに動く気配があって、何の感情も読み取れない無機質な声が響いた。それは今までに聞いたことがないくらいに冷たいものだったけれど、でも、それがなんだかとても嬉しく感じられもした。
「そうね、本当に。あなたは最低だわ」
この期に及んでなお、貴女は優しさを喪わないのね。私は、鵜島さんのその強さに改めて舌を巻いた。この人に巡り合えたのは僥倖だ、それでも私はそれを窓から放り投げるのだ。自分のちっぽけな狭量さを守るために。
「でも、初めてあなたの心に触れられたのよね。それはやっぱり、嬉しい」
「鵜島さん、そういうことを言うから、私は貴方を好きにならざるを得ないし、同時に、私は今、貴女との決別をはかっているのよ。言うまでもないことだろうとは思うけど」
私はくどくどと言い訳を重ねて、責任とか、罪悪感から逃げ惑う。彼女の方がきっとつらいだろうに、私は自分のことばかりだ。
「私はそれでも、クリスちゃんの友達だからね。それだけは忘れないでね」
鵜島さんはそう、きっぱりと言って、ついに席を立った。私は目を開けなかった。
『お前はホントにバカなんだな』
『~~ちゃんに合わせてあげてるのよ~? わからないの~?』
『合わせてやってんのはオレの方だっつーの! この後の演習でわからせてやっから待ってろ!』
目を開けて、手を天井に向かって突き出す。掌を開いたり、閉じたりする。違和感。
私は今、幸せだろうか。
「もうすぐ、バレンタインデーだね。私は少しだけ興味あるほうだけど、クリスちゃんはそういうの、気になるほう?」
少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべ、鵜島さんは私をちらりと一瞥して、それから視線を外した。こういうところが、実に上手いと感じてしまう。あの子とは正反対だ。
「気にならない、と言えば嘘になっちゃうかな~。だから、私も“少しだけ興味あるほう”に入るかもね~?」
私は、頭をよぎる影を振りほどいて、現実で相対する少女に負けじとほほ笑んで見せた。うまくいっているといいのだけれど。彼女は、形の良い、すっと通った眉を思い切りハの字にして口を尖らせ、力抜けた体で前に倒れ込むしぐさをとる。全身で演技する術を知っているのだ、この娘は。
「もうー、そうやっていつもはぐらかすー。 じゃあさ、私がもう少し踏み込んで話したらクリスちゃんももう一声いけるとかない?」
「あら、踏み込めるほどに興味があったのね。そうしたらぜひ聞かせてもらわなきゃ。親友としては、何か一役買えるかもしれないわよ~?」
「だめだめだめ! そうやって私だけに話させようっていうんでしょ! その手には乗りませんー、ちゃんとクリスちゃんの話も聞かせてもらうんだからね!」
親友、という言葉を敢えて口にしてみせたのを華麗にスルーされたことを良い方に捉えて良いのか悪い方に捉えるべきなのかで少しばかり迷うことになった。もう少し考えて言葉を選ぶべきだったとやや後悔したものの、済んだことに拘っているのは良くないというのは間違いないだろう。先を見なくてはいけない。
「私の場合、あまり具体的なことは言えないし、ひょっとしたら笑われてしまうかもしれない類の事柄だから~」
歯切れの悪いせりふだな、と我ながら情けなく感じつつもそう返すくらいにしか今の私には余裕というものがない。だから、どうしたって鵜島さんの器に対して素直に向き合えていないのだろう。
「笑ったりしないよ。笑うもんか。だってそれって私だけに話してくれることでしょ。きっとそう。クリスちゃん、誰にだって自分の事ほとんど話さないし、でも私にはそうやって、話そうとしてくれるんだから。そういう気持ちを笑ったりできるはずないよ」
この人は天使か何かだろうか。何をどうやったらこんな生き物ができあがるのか。私はこれが神をいうものの所業だとするならば今すぐでも入信しかねない。恐ろしい。というか、もうどうしたらいいかわからない。だめだ。
そこまで思考が進んだところで、意識がすっとんだ。
『バーカ、無理して分に合わないキャラ作ってんじゃねーよ。そんなに大した器持ってねーんだからできることだけやっときゃいいんだよ』
『あらあ? どの口がそんなことを言うの~? 私が居ないとビクビク後ろを振り返ってるくせに~」
『ビクビクなんてしてねーだろ! お前が居るときは正面に集中できる、居なきゃ後ろだってそりゃ気にしないわけにはいかねーだろうが』
『ふ~ん』
『何ニヤニヤしてんだよ! 良いからお前はお前らしくしとけよな!』
目が覚めたら、そこは白い天井で、それは昔どこかで見た景色とよく似ていた気がした。それは錯覚だろうとわかるけれど、やっぱりそれでも似ていると思うのだ。それと、視界の隅には可憐な少女の心配そうな顔。
「ごめんなさい、私また」
「無理しないで、寝てていいよ。私こそごめん、何か、無理させちゃったんでしょ」
そうじゃない鵜島さん、無理をしたのは私が自分の意志でしたことなのだから貴女が謝るのはよくないこと。そう言葉にしようとしたけれど、貧血のせいでけだるさと嘔吐感に苛まれて、呼吸すらも満足にできなくなってしまった。
「………鵜島さん、ありがとう」
しばらくの間をおいて、やっとそれだけは口にできた。
「わかんないよクリスちゃん、私感謝されるようなこと何もしてない」
声が震えているのがわかる。今は目をつむっているからその顔はわからないけれど、多分、あまり素敵な表情ではないだろう。見えなくてよかったのか、それとも私は罪から文字通りに目を背けているだけなのか。
「私ね、ずっと貴女と誰かを比べているの。非道い女なのよ」
私は、相手の反応が見えないのをいいことに、事もあろうに懺悔を始めることにしたのだ。彼女の優しさに甘えて、救われようとしている。本当に、非道い女。
「私は、ここ何年かより前の記憶がないの。それはもう、綺麗さっぱりと、消しゴムをかけたノートよりも、絵の具をぶちまけたキャンバスよりも、嵐の後の青空よりも、驚くくらいに、何もないのよ」
彼女は何も答えずに、黙っている。私に喋ることを赦してくれているのだ、と好意的……いや都合よく解釈して、私は続ける。
「でも、私の、そのまっさらなはずの、記憶の中に、確かに、消えた跡みたいなものはあるの。黒電話の脇にあるメモ帳の、上から7番目に裏写りした筆跡くらいの頼りなさで、読み取ることはとてもできないくらいの痕跡でしかないのだけれど、確かにそれはあって、私はその、ほんの少し残った僅かな傷を、そう、傷を確かめたくて、それを求めてしまうのよ」
ひょっとしたら今にも席を立って出て行ってしまうかもしれないという恐れにちりちりと胸を焼かれても、もう、私は止まることができなかった。
「鵜島さん、私、貴女のこと、好きよ。そう言ってしまえるくらいには好き。その程度の、好き。あなたはとてもきれいで、凛々しくて、強い。いつだってまぶしいくらいに魅力に溢れてる。だから、私は、私には、あなたの強さと輝きは、辛いの。苦しいのよ」
私は滔々としゃべり続けた。時折痰がが絡むこともあったし、せき込んだりもしたし、嘔吐感は止むことはなかったけれど、それでも口をつぐむことはしなかった。そして、鵜島さんは、その間、決して席を立つこともしなかったし、口をはさむこともしなかった。それを、私は優しさだと受け止めて、彼女に醜い自分をぶつけてゆくのだ。
「貴女と一緒にいて、貴女と話すとき、私はいつも、貴女の魅力を感じながら、同時に、もうひとりの、誰かを想っていたのよ。それが誰なのか、私にはわからない。わからないけれど、確かに私はその誰かを知っていて、こう思っていたのよ。“鵜島さんは、あのひととはちがう”」
そこまで喋り終えて、私は一仕事終えた農夫のように、深く息をついて、そのあと、空を見上げようとして見えずに天井の一点を見つめ、そのあと眼をつむって、心残りなく死ぬときのイメージを思い浮かべながら、〆の言葉をつぶやいた。
「鵜島さん、もう一度言うわ。ありがとう。非道い女だったでしょう」
傍らで、微かに動く気配があって、何の感情も読み取れない無機質な声が響いた。それは今までに聞いたことがないくらいに冷たいものだったけれど、でも、それがなんだかとても嬉しく感じられもした。
「そうね、本当に。あなたは最低だわ」
この期に及んでなお、貴女は優しさを喪わないのね。私は、鵜島さんのその強さに改めて舌を巻いた。この人に巡り合えたのは僥倖だ、それでも私はそれを窓から放り投げるのだ。自分のちっぽけな狭量さを守るために。
「でも、初めてあなたの心に触れられたのよね。それはやっぱり、嬉しい」
「鵜島さん、そういうことを言うから、私は貴方を好きにならざるを得ないし、同時に、私は今、貴女との決別をはかっているのよ。言うまでもないことだろうとは思うけど」
私はくどくどと言い訳を重ねて、責任とか、罪悪感から逃げ惑う。彼女の方がきっとつらいだろうに、私は自分のことばかりだ。
「私はそれでも、クリスちゃんの友達だからね。それだけは忘れないでね」
鵜島さんはそう、きっぱりと言って、ついに席を立った。私は目を開けなかった。
『お前はホントにバカなんだな』
『~~ちゃんに合わせてあげてるのよ~? わからないの~?』
『合わせてやってんのはオレの方だっつーの! この後の演習でわからせてやっから待ってろ!』
目を開けて、手を天井に向かって突き出す。掌を開いたり、閉じたりする。違和感。
私は今、幸せだろうか。
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